「大切なものはずっと大切なままだよ…」
傷ついた心をそっと潤す、透明感あふれる優しい百合漫画。
都会育ちの女優JK × 田舎育ちの童顔JK。
恋人に裏切られ、傷心のまま訪れた夏の海岸。
住む世界の違う二人の出会いは、最悪な勘違いから始まった――。
まるで正反対の環境で育った二人は、ときに噛み合わず、
ときに戸惑いながらも、少しずつお互いを知っていきます。
恋人との別れを引きずる唯が、
多恵との出会いを通して少しずつ前を向いていく物語でもあります。
恋のときめきだけでなく、誰かの優しさが心を救う瞬間まで描いた、
どこまでも澄んだ空や海のように、
静かで優しい空気に包まれながら読み進められる一冊です。

\ この透明な物語をのぞいてみる /
『水色シネマ』とは?
作品概要
- タイトル:水色シネマ
- 著者:乙 ひより
- 出版社:一迅社(百合姫コミックス)
- 巻数:1巻完結
- 発売日:2013年7月5日
あらすじ(ネタバレなし)
恋人の裏切りに遭い、傷心のままロケ地の海岸に佇んでいた
女優として活躍する唯。
そんな彼女を「自殺するのでは」と勘違いし、
全力で抱きとめ……海に落としてしまったのが、
地元の素朴な女子高生・多恵(たえ)。
この最悪(?)な勘違いから始まった出会いでしたが、
唯は半ば無理やり多恵を自身の付き人に指名したことで、
二人の不思議な距離感の日々がスタートします。
都会で擦り切れていた唯の頑なな心は、
多恵の素朴で真っ直ぐなぬくもりに触れることで、
少しずつ変化していきます。
そんな矢先、唯の過去である元カノの登場によって、
物語は静かに波立ち始め……。
住む世界の違う二人が、互いの存在によって心を照らされていく――。
ゆっくりと恋が育まれていく過程を、しみじみと味わえる物語です。
作品の魅力を深掘り|不器用な心を照らす、水色の透明感
乙ひより先生の作品には独自のすがすがしさがありますが、
『水色シネマ』はその中でも特に”透明感”が際立っています。
また、先生にとって初めて1冊まるごと一本のストーリーを描いた百合長編。
そのぶん二人の関係性をじっくり積み上げた、読み応えのある一作です。
みどころ①|都会の女優と田舎っ子、愛おしすぎる「ギャップ」の楽しさ
本作の大きな魅力のひとつが、なんと言っても二人の間に生まれる「ギャップ」です。
都会育ちで、若くして芸能界という大人の世界に身を置く唯は、強がりで素直になれない照れ屋さん。
対する多恵は、地味で童顔で、とことん天然でピュアな田舎の女子高生です。
都会の常識と田舎の当たり前が度々バッティングし、最初はなかなか噛み合いません。
しかし、多恵の真っ直ぐすぎる接し方に、唯が思わずたじたじになったり、
素直じゃないけれど優しい一面を覗かせたりする姿には、胸キュンさせられます。
恋愛にガツガツしていない、和やかでふわふわとした少女漫画のような空気感が、
二人のやり取りをどこまでも微笑ましいものにしています。
みどころ②|深夜の海で唯の心を照らす、多恵の真っ直ぐな一言
この作品で最も印象に残ったのが、多恵のこの一言でした。
「大切なものはずっと大切なままだよ…」
『水色シネマ』本文より引用
元恋人との思い出が詰まったペンダントを失い、
「もう意味がない」と諦めようとした唯。
そんな唯に対し、多恵は夜の海へ飛び込み、
必死にペンダントを探しながら、この一言を届けたのでした。
裏切られたからといって、
楽しかった過去の思い出まで無理に否定しなくていい。
その一言で、唯の胸に溜まっていた澱が、ゆっくりと溶けていくのを感じました。
そして、大切にしたいものが少しずつ変わっていく瞬間でもあったのだと思います。
何気ない一言が誰かの心を照らすことがある。
多恵はそれを、理屈じゃなく体ごとやってのけたのです。
ゆりねこ多恵ちゃんってゆるふわだけど、芯の強い童顔JKだよね
みどころ③|ドロドロしそうでしない、多恵の「ふんわりゆるピュア」な魅力
恋人の裏切り、元カノの登場、東京への連れ出し展開など、
設定だけ見れば昼ドラ顔負けのドロドロ劇になりそうな本作。
しかし、実際にはそんな泥臭さがありません。
多恵ちゃんの「ふんわりゆるピュア」な魅力のおかげで、
ドロドロした空気がすぐに清流へと流されていくからです(笑)。
ふわふわで天然、真っ直ぐで純粋。
地味で子供っぽいけれど、だからこそ嘘がない。
唯どころか、元カノに対する接し方も、感想も、とことんまっすぐで、
その真っ直ぐさが、作品全体の透明感を保っています。



元カノは悪い人ではないんだけど(多分)、ちょっと擦れちゃってるというか、不器用というか……。
でもなんだかんだ、多恵ちゃんのことは気に入りそうな気がします。
最後に|今なお色褪せない名作と、あとがきの衝撃
『水色シネマ』10年以上前の作品ですが、
今読み返してもその瑞々しさは全く色褪せていません。
むしろ、SNS全盛の今だからこそ、このガラケー時代の少し不器用で、
ゆっくりと心の距離を縮めていく二人の空気感が、
より一層愛おしく、新鮮に感じられます。
現在も電子書籍等で手軽に読むことができるので、
心の乾燥を感じているすべての人に、
いま改めて全力で推薦したい大好きな一冊です!



余談ですが、あとがきには「不甲斐ないばかりに恐れ多くも森島先生と四ツ原先生に原稿を手伝ってもらった」という記述が。森島明子先生と四ツ原フリコ先生ってこと……? なんという豪華な制作陣!!
本作は電子書籍・紙の単行本どちらでも読むことができます。
テンポの良さをすぐに楽しむなら電子版、装丁や帯の熱量も手元に置きたい場合は紙版が向いています。
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